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よい子のQP童話「湖姫」【後編】

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王子様との恋に破れ、妖精の国に戻った妹姫。
傷心の彼女を王様と姉姫は優しく慰めるのでした。

その頃、人間の国では・・

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「お父様ったら、すぐにでもメイ王女と結婚しろ!!って張り切っちゃってるんだから。彼女のギターにはほんとにうっとりだけど、毎日あんな長いソロをされたら飽きちゃうよ
お散歩中の王子様が、なにやら一人でぶつぶつ言っています。
「それに、なんだか湖で聞いたベースの音とはどこかしら違う気がするんだけど・・。」
王子さまは、ずっとそれが心に引っかかっていました。ベースの音は一度弾いたきりで、二度と弾こうとしないのも気になります。
「一緒に聴いてた小間使いのジョンぴーは、急にやめちゃうし・・。どう思ったか聞きたかったのに
子犬の様な目をして、自分の話を静かに聞いていた小間使い。その様子を思い浮かべると、王子様は何故か少しだけ甘酸っぱい気分になるのでした。

「そうだ今日は弟王子が帰ってくるんだった!」

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弟王子とは、王子様の双子の弟君でした。跡継ぎに恵まれなかった隣の国の王様のもとへ養子に行っているのですが、今日はメイ王女を紹介するために、帰ってきてもらったのです。
弟君との挨拶が終わると、メイ王女はさっそく得意のギターソロを披露しました。

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「これが噂の君の婚約者かい?」
弟君が、こっそり囁きます。
「お父様が張り切ってるだけで、僕にそんな気はないよ」
「いくら才色兼備でも、僕は好みじゃないなあ 背も鼻も僕たちの二倍くらいあるよ
「背は二倍もないよ」
「じゃあ、鼻はあ・・」
弟君がそう言いかけた時・・
「じゃあ、鼻は二倍あるっていうのかいーーーっ!!!!!!
突然恐ろしい怒声が、部屋中に響き渡りました。

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なんと、今までおしとやかにギターを弾いていたメイ王女が青筋たてて怒り狂っています。
(えーーーーっ(◎o◎;))
王子様たちは、ただただビックリです。メイ王女は鬼のような形相で続けました。
「私は耳がとってもいいのよ!!こっそり喋ってるつもりでも全部筒抜けさ(ふんっ)」
いつの間にか口調まで変っています。
「フレディ王子、よくも私をコケにしてくれたねっ!!!
「コケにって・・そんな・・」
「この音でも喰らえっ!!!!!!

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メイ王女がギターをかき鳴らすと、地獄の獣が咆哮するような不気味で恐ろしい音が響きました。
「きゃっ
いかなる魔法か、その音を聞いたとたん王子様たちは意識を失ってしまったのです。メイ王女が更にギターを鳴らし続けると・・

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王子様たちの身体が猛スピードで、渦巻きのように回転し始めました。そして、そのままどこかへ消えてしまったのです・・!!
「ふんっ私をバカにするから、こういう目にあうのさっ!! 私のプライドは背よりも鼻よりも高いのよっ
メイ王女が吐き捨てるように呟きます。

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その様子を、こっそり天使が見ていました。どうにも胡散臭く思えるメイ王女を、ずっと探っていたのです。

「おおっと!!こんな早く行動を起こすとは思わなかったぜ
天使にも想定外の成り行きでした。
「いろいろ調べてみたら、ジョンガラ国ってのは魔法使いの国じゃねーか!! メイ王女は、その中でも物凄い力を持つと言われる伝説の魔女だ・・。どうりで鼻が高いはずだぜ」

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「誰??私の鼻のことを言ってるのはっ!!!」
メイ王女が叫びました。手には王子様からプレゼントされた宝石箱を握っています。自分がベースを弾いたと名乗り出た際に、お礼として贈られたものです。

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「俺だぜ ・・ほんとに耳がいいんだな」
「・・お、お前はどこやらで恋愛相談をしている、軽薄な天使ではないかっ!!!」
「知ってくれてるとは光栄だぜ。そんなことより、王子たちをどこへやった? ほんとに消しちまった訳じゃねーだろ??」
「消したかもしれないよ
メイ王女は毒づきます。

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「そんなこたーないはずだ。お前、王子のこと、ほんとに好きだっただろ? 些細なことで逆上したのが、その証拠だぜ。それに、そんな宝石大事にしちゃってよ~!」
「・・何をいい加減なことをっ
「耳のいいお前は、湖畔で歌ってる王子の声を遠くから聴いて恋に落ちた。なんとか近づけないかと思っていたとこに、ベースを弾いた奴を探してるっておふれが出て、それに飛びついたんだよな??」
「・・・・ふんっ
「でも人間と魔女じゃ、いずれはうまくいかなくなるだろーよ? 人間になる気があるなら、俺が力を貸してやるけどな・・」
メイ王女は、一瞬泣きそうな顔になりました。
「・・私は国を代表する魔女なのよ。そんなわけにはいかないわ
それを聞いた天使は、慰めるように微笑みます。
「・・だよな(^^)。それが普通だぜ。でも、俺はそんな普通じゃねえ奴を一人知っちまったんだ。だからどうしてもそいつを助けてやりてーのさ

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「・・・・王子たちは、国中の湖を探せば見つかるわ・・。これくらいで勘弁して・・」
メイ王女は力なく答えると、天使から目をそらして、出口に向かいました。天使はそれを目で追います。そして
「寂しくなったら、俺んとこに相談に来いよ!!!」
出て行く王女の背中に向かって声をかけます。
「・・お前もいいオンナだからよぉ。無理なく仲良くやっていける相手が、きっと見つかるぜ

ちょっと休憩~

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お茶B「メイ王女、泣かせるねえウルウル」
お茶R「会見Bのやつ、キャラ違いすぎねーか
・・どうでもいいけど、俺にまで宣伝させんなよっ(怒)」
J×2(・・僕たち、今回ここまでセリフなし(;-_-)o)

休憩おわり~

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妹姫が妖精の国に帰ってから、数日が経ちました。
王様と姉姫の優しさのおかげで、妹姫は少しだけ元気を取り戻しました。しかし・・
「きっともうすぐ王子様はあの人と結婚してしまうのだわ
そのことを思うと、妹姫の心は押しつぶされそうになるのです。

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そんな頃、王様の元へ困った知らせが舞い込んできました。王様たちの住む湖のとなりのとなりの湖に、最近『化け物』が住み着いたというのです。
『化け物』は身長は山よりも高く、身の毛のよだつような恐ろしい姿をしており、人間達は恐怖でパニックに陥っているそうなのです。
そして人間たちの間では「『化け物』は楽器の声で歌う人間の乙女を探している。それが見つかれば、何処かヘ去る」という噂が何故か広がっています。長老の夢枕で神のお告げがあっただの、通りすがりの修行僧が言い残して言っただの・・噂の元ははっきりしないのですが・・。

「楽器の声で歌う人間・・とは、まさに私のことではありませんか!」
話を聞いた妹姫は驚きました。

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「お父様、私を『化け物』のところへ行かせてください
「何を言うんだい姫っ!!」
王様が慌ててとめます。
「失恋したからって、やけっぱちになってはいけないよ
「『化け物』が住み着いてしまっては、お父様が困るのではありませんか!!人間達の安全な暮らしを守るのが、お父様のお仕事なのですもの」
確かに人間達の安全を、時には命にかえても守るのが妖精の王様の使命でした。今回ももし『化け物』が人間に危害を加える様なことがあるなら、王様自ら征伐にいかなければならないのです。

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「お父様をそんな危険な目にあわせたくないのです。親不孝な娘のせめてもの償いですわ・・」
妹姫は必死で訴えました。
「・・そんなことを言っても、姫一人をそんなところへ・・」
王様も頑として聞き入れません。今まで黙っていた姉姫が口を開きました。
「お父様。私も妹姫と一緒に参ります だって、私も『楽器の声で歌う人間』なのですから・・」

「えーーーーっ(◎o◎;)」
妹姫と王様が同時に叫びました。姉姫は微笑みながら続けます。
「妹姫が人間になった時、双子である私も一緒に人間になってしまったのです。妖精の双子というのは、そういうものなのよ(^^)」
「えーーっ、えーーっ、ええーっ!!!!
妹姫はパニック状態です。姉姫はそんな妹を楽しそうに見て言いました。
「あなたったら、やっぱり天使の注意事項を聞き逃しちゃったのね。こうなることが分かっていたら、優しいあなたは人間になるのを躊躇するはずだものね

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そう言えば・・!!
妹姫は頭が真っ白になりました。確かにあの時、天使は「人間になる前に聞かなければならないこと」があったと言っていたではありませんか!! 私がせっかちなばっかりにお姉さままでこんな目に。妹姫は自分が情けなくて、おんおん泣いてしまいました。

姉姫はさらに王様に訴えています。
「こうして姉妹が揃って人間になってしまったのは、きっとお父様の苦難を救うために神様がお考えになったことですわ(^^)。それに今回の話、私にはどうしても悪いことだとは思えません。何か運命の大きな波に呼ばれている気がするのです

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姉姫の凛とした言葉に、遂に王様が折れました。少しでも身に危険を感じるようならすぐ引き返してくることを条件に、お姫様たちを『化け物』が住む湖に行かせることにしたのです。

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問題の湖にお姫様たちが近づくと・・
誰かの歌う声がかすかに聴こえてきました。
「はっこれはっ!!!」
妹姫が駆け出しました。
「どうしたの???」
姉姫が後を追います。
「王子様の声に似ているのっ!!!!」

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お姫様たちが湖に着くと、そこには・・!!
人間達が噂していた通り、身の毛のよだつような恐ろしい『化け物』がいました。下半身は湖の中。それでも頭は後ろの山よりも高いところにあります。どれだけ身長があるのでしょう??
しかし、先ほどの王子様に似た歌声は、この『化け物』が出しているようなのです。

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(・・こ、これはやはり、どう聴いても王子様の歌だわ)
その歌を聴いていると、妹姫は恐ろしさも忘れて泣きそうになってくるのでした。
「まあ素敵な声ねえ・・」
姉姫も恐ろしさを忘れて、聴き入っているようです。そして
『まあすてき、なんてうつくしいこえでしょう』と歌い始めました(聡明な姉姫も作詞の才能だけは無いようです)。妹姫も思わず一緒に歌います。

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二人の声を聴いて『化け物』が驚いたように見えました。歌の出どころを探るように、あちこち見回しています。やがて二人が歌っていることに気付いて、さらに驚いたようでした。

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その瞬間、目の前の『化け物』が急に渦巻きのように高速で回転し始めたのです。
「きゃ~
お姫様たちは何事かと、身をすくませました。

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緊張して見守っていると、渦巻きは次第に小さくなっていきます。心なしか色合いも変ったように見えました。
そして・・!!

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渦巻きの回転がいきなり止ったと思うと、そこに王子様と弟君の姿が現れたのです。
「えーーっ、これはいったい!!!!」
お姫様たちには、目の前の出来事が信じられません。

王子様が妹姫に微笑みかけます。
「あのベースは君の声だったんだね。今、はじめてわかったよ(^^)」

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「王子様・・!!・・いったいこれは・・!!」
妹姫は混乱と喜びで、それだけ言うのがやっとです。
「メイ王女は悪い魔女だったんだよ・・」
王子様は妹姫の目を覗き込みながら答えました。
「僕とここにいる弟は、彼女を怒らせてしまって魔法をかけられちゃったんだ
「・・魔法?・・
「うん(^^)。あんな姿になった僕たちを天使が探し出してくれてねえ
王子様は楽しそうに笑っています。

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「『お前たちの魔法は、湖で聞いたベースの音を聞けばとける。それまでウロウロしねーでここで待ってろ!!』って。うふふ面白いねえ、あの人。」
笑い事ではない気もしますが、やんごとないお育ち故か王子様は何事にも鷹揚に構えているようです。

「『俺が必要な噂を広めて、うまくお前たちがその音を聞けるようにしてやるからだって!!』
「まあ!!」
人間達の間に広まった噂は、天使が広めてくれたものだったのか・・。妹姫は、改めて気のいい天使に感謝しました。

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「ちぇっちぇっ僕なんかさあ、たまたま近くにいただけなのに巻き込まれちゃったんだよ
弟君がぼやいています。
「だいたいさっ・・あっ
ぶつぶつ言っていた弟君は、ニコニコしながらこちらを見ている姉姫の視線に気付いて顔を赤くしました。照れ隠しに姉姫に話しかけます。
「あの・・こんにちは~(*^^*)
(うふふふ可愛い)
姉姫の目には弟君の無邪気な様子が、とても好もしくうつりました。

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「僕たちを助けてくれてありがとうジョンぴー。それに君があのベースの人だったなんて、とても嬉しいよ」
「・・王子様
妹姫の頬を、喜びの涙がつたいます・・・

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さてさて、妹姫は王子様の元にめでたくお嫁入りしました。息子たちの命の恩人ですもの。国王夫妻も大賛成です。

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そんなある日、妖精の国のお父様から妹姫に手紙が届きました。
実は、魔法からとかれた王子様に再会したあの日から、お姫様たちは妖精の国に帰れなくなってしまっていました。不思議なことに、どうやっても入り口がわからないのです。
「恋が成就して、私たちは完全に人間になってしまったということかもしれないわ」
姉姫は思慮深い瞳でそう言います。

お父様からの手紙には、姉姫の言葉を裏付けるようなことが書かれていました。


愛する妹姫、元気で暮らしているようだね?
姫たちが王子様たちと幸せになったことは、ちゃんと知っているよ 姉姫まで弟君と結婚したのは驚いたけれど・・。

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二人ともいい相手にめぐり合えて、親としてとても嬉しいと思っている。
王子たちと会ってから、妖精の国に帰れなくなってビックリしたろう? 天使の話では、王子様への思いが叶った段階で、お前たちは本当に人間になってしまったのだそうだ。私の姿ももう見えないはずだ それを思うと少し哀しいが・・仕方がない。
これからも、陰ながらずっと見守っているよ

                   父より

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「お父様・・ハラハラ」
「ジョンぴー、もう一枚手紙があるよ・・」


追伸
実は、姫たちの恋に触発されて、恥ずかしながら私もあの天使のところに相談に行ったのだよ
そして、とても素敵な人を紹介してもらったよ

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天使「おめー、いい歳こいてマジかよっ
王様「・・そんなあ歳なんか関係ないじゃないですか~!!紹介してくださいよお~
天使「おめー、受付野郎にもどってねーか

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天使「まあいいちょうどお前にぴったりな、いいオンナがいるぜ!!」
王様「ほ、ほんとですか~~

・・・ということで、紹介してもらったのがこの人だ!!
写真を送るから見ておくれ(^^)
それから、同封した宝石箱。詳しいことは分からないのだが、その人が王子様に返しておいてくれ・・というのだよ。「あなたの本当の『ベースの人』に差し上げてください」と言えばわかると言っている。・・ほんとに、わかるかな??

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「あれ??この宝石箱、なんか見覚えあるんだけど?」
王子様が送られてきた宝石箱をマジマジみています。
「えっ??まさかっ・・
妹姫はおそるおそる、別の封筒に入っていた写真を取り出します。
「どっひゃ~~~(◎o◎;)

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天使「へっ こいつもほんとは悪いオンナじゃねーから、大丈夫だぜ

おしまい

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